すこし濡れた散歩 5.
 
 
 
■ 私はレーヨンが混ざっているというジーンズを履いていた。
 革のシートを痛めないところと、伸ばせばノビールところが気に入っていた。
 ミニの彼は40前後くらいで、やや流行遅れの眼鏡をしている。
 ということは、定番の形ということでもある。
 
 
 
■ ミニのエンジンに全合成というのはいかがなものかと、後で少し思った。
 ピストンのクリアランスの問題からである。確かあれは、ミッションも同じオイルで潤滑していて、街場を走ると3000キロできっちり交換してやらねばならない。各部のグリス・アップもである。
 とは言うものの、カワサキのW1SAやヤマハのペケエスなんかも、組みなおした後はモチュールを使う店が多いので、それなりの理由もあるのだろう。
 
 
 
■ 缶コーヒー1本のあいだ、私たちは通りすがりの間柄だった。
 そのミニにはキノコと呼ばれるエア・ファンネルが付いていて、吹かすとフゴッと慌てたブルドックのような鼻息で加速するのである。