New York, New York 3. 
 
 
 
■「めぐり逢い」はとてもいい映画で、時々みかえしている。
 はじめてみたのは果たして何時の頃だったか。
 港区にある古いビルの一室で、なすすべもなくTVを床に置き、安酒を嘗めていた80年代終わりか90年代初めの頃だろうか。
 女のいない週末の夜、大抵は深夜TVがトモダチだった。 
 
 
 
■ 当時、グラントはいい気なお坊ちゃまだと思えたし、デボラ・カーにしてもその横顔の美しさは認めるが、よくいる口煩い妙齢本格派としか思えず、狐にもいろいろあるのだということが分からなかった。
 たまたまそうした先輩格の妙齢がいたからかも知れない。
 背後で眺められている視線には気づかないものなのである。