New York, New York.
■ マーティン・スコセッシ監督の映画「ニューヨーク・ニューヨーク」では、NYを舞台としながら、その実景の多くはハリウッドのセットだった。
舗道の敷石の大きさまで、自分が記憶しているそれに合わせたとスコセッシは語っている。確かにラスト近く、一枚の広さが大きい。
この広さは、50年代後半の車の広告に描かれたそれに似ていた。
■ いかにもの造りのセットの前で、サックスを吹く若いデ・ニーロを眺めていると、ああこれはNY版の「東京流れ者」に似ているのかしら、という気もした。
鈴木監督のそれは導入部に東京の絵が数枚あるだけで、残りは人工的セットである。
あの無機質さが妙にモダンに見えていたのだから映像というのは不思議なものだ。
■「ニューヨーク・ニューヨーク」の中では、ライザ・ミネリが歌う場面が案外にいい。ダイナミックで情が深いところをうまく演じていて、同名のその曲は、その後シナトラの歌で一般に知られるようになった。
野心に溢れた若者がニューヨークに出ていってTopを目指す。
そのためには君についてきて欲しいんだ、というような、ありがちなラブソングなのだけれども。