悲しみに似た風景。
■ 石川セリさんのこの歌は、深夜放送でよく流れていた。
AMラジオである。
受験にさしかかっていた頃か、ものごころついた中学生達はたったひとり自分だけの世界に入っていった。
翌日教室で、あれはいいとか悪いとか、一丁前の顔をして話し合っていた。
夏になると透けてくる、女学生のブラウスを気にしながら。
■ 10年経ち、社会に出る。
また10年。
私はいつか、そこに立ち尽くしていた少年が何かをつくっていくだろうという気がした。
表現の世界だったり昼間のそれかもしれないが、多分彼は、その風景を忘れないだろうという気がする。
そして風景とはおそらくは世界なのである。