音無しの構え
     の3.
 
 
 
■ いつだったか、日吉坂の界隈を老紳士が歩いていた。
 ソフトを被り、カシミアのコートを着ている。
 見知った運転手に頭を下げ、地下鉄の階段を降りていく。
 
 
 
■ 手には何も持たない。