来栖心中 2.
 
 
 
■ 大岡昌平さんに恋愛小説がいくつかある。
 花柳小説の流れを汲むものもあり、主人公は女給だったりそうでなかったりだが、「花影」については、極々初期、93年くらいの緑坂に書いた。
 せんだって捲っていたのは「来栖心中」と「黒髪」で、半ば浄瑠璃の語りのような筆遣いで話がすすんでいく。
 
 
 
■ 人は恋のために心中するのではない。生活のためである。
 と、大岡さんは書いている。
 実はまあ、まったくその通りなのだが、女の目からみた興醒めのプロセスが描かれていたりして、それもまたひやりとするのである。