夜間戦闘機、月光。
 
 
 
■ 緑坂に何度か書いているが、私は「丸」という雑誌が好きである。
 古本屋でみつけては適当に買い、大体隅から隅まで読んで役目を終える。
 ヤクト・パンツァーの前部装甲が何ミリであっても、いまの仕事や生活に一切関わりはないのだが、成程と思って漠然と眺めている。
 奇妙な精神論と、持たざるが故の寂しさと。へにこそしなめ。
 
 
 
■ 巻末にある当時の体験記が面白い。
「麦と兵隊」や大岡さんの「野火」とはまた違う角度、半ば民俗学的見地からの実態と、それを現在語れるだけの距離、いささかの余裕とが毎号繰り返されていた。
 つまり死んだ者は語れないのである。
 
 
 
■ 本土防衛が絶望的になりかかる頃合、斜め銃を装備した夜間戦闘機が配備される。
 双発の中島製エンジンを積んだ「月光」である。
 B29が巡回する高度一万メートルまで昇れる戦闘機は皆無だった。