伸ばせばのびーる、じたじた55.
 
 
 
■ ま、この話は何度か緑坂やその他に覚えもあるのだが、この当時の吉行さんは暇である。
 こりゃどういうことナンダロウと、友人に電話しまくっているのだから面白い。
 近藤さん杉浦さんのお名前が出ているところを見ると、時期として大体想像が付くわけであるが。

 こういう連中とは、話すに足りぬとおもい、一人しずかに考えることにしたが分かるようで分からない。「じたじた」と快感を滲み込ませて、僅かずつの蓄積で、頂上まで持ってゆくのだろう、とおもうが、具体的なことは分からない(「快楽の秘薬」23頁)。
 
 
 
■ で、吉行さんは水上勉さんの「好色」という作品にその答えがあるということにする。
 かいつまんでいうと、ゼンギ55分ということであった。
 私は今、軽い二日酔いでもあるので、とても漢字で記す気にはなれない。
 手順が上から下まで、ものの見事に描かれている。巻物である。
 ぱらぱらと目で追うと、
 
 じっと、息をしていていいんです。じっとしている。すると女は次第に鼻息を荒くしてくるが、しかしまだ三十分ほどしか経っていない。残りの二十五分は、(以下略。前掲:25頁)。
 
 と、ある。
 しかしまだ三十分ほどしか経っていない。
 というところで思わず笑ってしまったが、時計をちらりと見ているわけで、どの道も極めるには難儀なのだった。