着流し 2.
■ 眠狂四郎の円月殺法というのは、冷静に考えるとほとんどギミックである。
大体あの細い刀で、何人もの人間を切れる訳がない。
この辺り説明すると野暮になるのだろうが、山本七平氏の「私の中の日本軍」の中に、日本刀による100人斬りの可否という主題で記されていたことを覚えている。
兵器としては、日本刀というのは不完全なものだと。
折れる曲がる、刃こぼれはする。
一番いいのは、先を尖らせた円匙(えんぴ。つまりシャベル)だという話があって、つまりHOWAの小銃とAK47の違いみたいなものだろうか。
■ みかけたアストンから何故こうなるのかわからないが、そこは流れである。
船宿辺りでごろごろしている狂四郎に、ねえ旦那、と年増が声をかける。
当時の年増というのは20過ぎのことを言うのだが、なんともはや、人生は短い。