湯女絵図。
■ ぱらぱらと古い書籍をめくっていたら、一枚の写真が出てきた。
熱海美術館、現在はMOA美術館所蔵の、湯女図(重文)である。
髪を後ろで軽く縛った湯女が、ぼんやりと遠くを眺めている。
何人かいる女たちの真ん中に立って、腕は懐にはいっている。
着物にはさくらの模様が描かれていて、17世紀初頭ではまだ友禅が出来ていない頃合だから、手描きの「辻が花」か小袖だろうか。
■ さくらの模様はかなり大きい。
身体の線は一筆で柔らかく、無造作な前髪の辺りと相まって、濃艶な色気を撒き散らしている。
湯女は放心したかのように空を見上げているのだが、じきに夕刻である。