四九 龍的成功
■ 灰白色のフェンスが周囲を囲んでいる。フェンスには大型のポスターやスローガンが貼られている。私のつくったものもあった。龍の口に携帯電話がくわえられ、空を飛んでいる。ポスターにスポットがあたっている。
詰め所があった。二重のゲートになっている。一度やりすごしその先の交差点でUターンした。街路樹の下に停めてエンジンを切る。葉子のバンを待った。煙草は吸わない。
ボックス型のバンの中には走羽と私、それから若い男が二人座っていた。後部荷物室にもうひとりいる。
五分程たったろうか。日本製の小型バンが来た。運転しているのは真壁のようだ。
詰め所の前でバンは急ブレーキをかけた。タイアを鳴かせ白い日本製のバンは斜めに停まる。
助手席のドアが開かれ女が飛び出てくる。
中国服を着た葉子だ。赤い。
真壁がクラクションを鳴らす。何度も鳴らし早口で何かを言っている。
葉子はラメの入ったヒールで逃げようとする。甲高い声を出している。
詰め所の扉が開かれた。男がふたり顔を覗かせた。
真壁が車から降り葉子を追おうとする。
葉子は転んだ。真壁が近寄る。
好色な日本人が上海娘の誘惑にしくじったという案配だ。
真壁のネクタイは緩めてあるが、やはり地味だ。両手を広げながら葉子の傍による。
詰め所にいた男のひとりが真壁の方に歩きだした。
腰のベルトに伸張式の特殊警棒が挟まっている。一度後ろを振り向き、詰め所のドアの前に立っている相棒に笑いながら合図した。