■ 翌朝、事務所への出がけに眺めるとまだ眠っている。不思議な匂いがするので毛布を剥いでみると、腰のあたりに血が滲んでいる。私は紙幣を置き、鍵をポストに入れるようメモすると部屋を出た。
 夕方仕事を終え、部屋に戻るとシーツが干してあった。
「乾燥器のつかいかたがわからないのでヒモをはります」
「お金は借りてゆきます。葉子」
 鍵がないのだ。
 部屋の端から端にナイロンの紐が張られていた。シーツが垂れ下がっている。灰皿は洗ってあり、ベランダのアルミ缶がひとつの袋にまとめられている。私は小さなグラスでのろのろ酒を嘗め、まだ湿るシーツを眺めては眠ることにした。