横浜ホンキートンク・ブルース 2.
■ この曲の作詞は、俳優の藤竜也さんである。
日活でやさぐれたチンピラ役をやらせると抜群に旨かった。
80年代の初めだろうか、煙草の宣伝でその鍛えられた背中がTVに映り、日活を知らなかったような女子大生にもファンが増えた。
当時付き合っていた妙齢が盛んにそういうので、けっ、と思っていた覚えがある。
20代の若造には、中年の男の口髭の意味なんてものは想像もつかなかった。
不順、じゃね、不純だと思ったのだった。
■ 単に男の嫉妬なのだが、それはそれとして。
藤さんの中年になってからの何本かの佳作を、今なかなか見ることができないでいる。
確か北方謙三さんの原作だったが、賠償さんと競演したハードボイルド映画があって、そのラスト・シーンで主人公の藤竜也さんが車のハンドルを切る。
想いを断ち切るかのようにぐっと廻すのだが、一瞬のタメというものが映像の間合いであった。
■ 間合いというのは文体に似ている。
車はライトの四角いスカイライン。それも平凡な車種である。
バブルの頃の日本映画というのは、当時の若い女性の髪形のように波打った装飾過多か、さわやか馬鹿な男たちが連なるものが多かったのだが、深夜漠然と眺めていたそれだけは印象に残っている。
あらすじも忘れてしまったけれども。