虫 2.
■ まずまずの天気だったが、夜になった。
予定をとりやめ、一日部屋にいた。
電話なんぞをしている。
飯もとりあえずすこし食う。
■ 窓を開けると、虫の声がきこえた。
月は出ていないが、薄い風がある。
椅子の背に躯をかけると、背骨がごきりと鳴った。
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■ 盲目の小さな女の子がこちらを視ているように思った。
「よう、元気か」
と、答えようとしたが、髭を剃っていないことに気付いた。
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■ という緑坂を随分と前に書いた。94年の秋である。
ある種、幻視のようなものだと言ってしまうとつまらなくなる。