踵について 3.
■ ベルトを買ったときだった。
黒いナイロンのハーフコートがあり、それを羽織らせてもらう。
襟は立っていて、裏に革が張ってある。
英国と独逸、そして伊太利亜が合体したようなデザインなのだが、ま、それが今の欧州の現実かも知れない。
妙齢本格派の店員が、上着を貸してくれた。
これを着てサイズを確認しようということである。
■ とても軽いのでふと値札を見ると、紺のブレザーが10の後半である。
私は少しだけ色のついた眼鏡をしていた。
その日は曇っていたからである。
■ あざとくないですか。
鏡に映る姿を見ると、実にそうなのである。
お客様、背丈おありになるから。
接客のプロとはこうしたもので、非常に危なかったのである。