雨夜風鈴。
 
 
 
■ その頃通っていた女のところは、窓に茶色のブラインドがあって、その横に風鈴がぶらさがっていた。
 誰と買ったものか、そういうことは聞かなかった。
 湿った空気の中で窓を薄く開ける。
 煙草の煙が逃げてゆく。
 
 
 
■ 帰り際、小銭が足りなくて、女からもらった。
 コイン駐車場まで歩くと、珍しく瓶の牛乳が玄関先に配られている。
 十年前なら一本盗んだところか、と思いながら雨上がりの道を歩いた。