月夜の汐路のむこうから。
 
 
 
■ 口笛が 聞こえる港町
 と、続く。
 作詞は猪俣良さん。
 
 
 
■ この曲には何度か「兄貴」という言葉が出てきて、兄貴は二人の幸せを祈りながら旅に出たことになっている。
 私はリピートをかけながら、窓ガラスに雨のしずくが斜めに走るのを見ていた。
 夜になって風が出る。
 
 
 
■ ひとつ前のAMGは、ディーラーで整備をしているところである。
 芝浦でもない。ふたつあったエクボの修復は終わったと電話があった。
 メルセデスには70年代に280SLというとても綺麗な車があって、後からクーラーも付けることができた。ハードトップの天井が僅かに窪んでいる縦目のそれである。
 かつて仕事で一緒になった某氏が、顔に似合わず好き者で、若い頃それに乗っていたという。私は呆れて尋ねたのだが、所帯を持つ時にそれが資金になったと言って笑っていた。彼はMBAを持っているが、その反面、埠頭の辺りを斜めになって走り回るのが好きだと聞いて、馬鹿だねえと思った。
 裕次郎の歌からどうして車の話になるのか不明だが、あの頃の歌謡曲の歌詞にも、時折はっとする言葉が混じっているのである。