いつも無駄の効用。
 
 
 
■ 夏風邪が長引いていて、そのせいか酒を嘗めていない。
 珍しいことでもあるが、考えてみるとそろそろと酒の量は減っているようである。
 数年前までは、一晩にボトル半分くらいのことが、ままあった。
 で、翌日チンボツしているのだから仕方がない。
 
 
 
■ 夏の手前というのは、毎年自分の中に潜っていたような記憶がある。
 今年はそれが車の選択として表に出て、なんてこったい、思春期に友人とバイク雑誌を眺めてはああでもないと言いあっていたことと変わりがない。
 あのとき俺たちは、バイクの排気音を全て口で言えた。
 ローギァに入った時の、ホンダとカワサキの違いまでも再現していた十代の馬鹿。
 
 
 
■ 潮見坂を曲がって、銀色のジャガーのクーペが曲がってくる。XK8である。
 後姿を眺めていると、やや腰が高い。
 やはりすこし落とさないと駄目かね、などと、その内装のことを思い出している。
 使い物にならないナビや、案外に質感のないシフトカバーの辺り。
 ちょっぴり緩いダンディズムだと思っていたことが長いことあったのだろう。
 そっちにゆかず、こちらへゆく。
 今度何にしたの、うん、ヤンキー車だよ、と最近答えているが、気分は緩い。