愛と勇気とあんなもの。
■ すこしぼんやりしようと思い、タクシーを拾って虎ノ門にゆく。
私はゴアテックスのジャケットで、その下はプレスを忘れた綿のパンツである。
ガスの乾燥機を使うと一気に乾くのだが、生地には悪そうだ。
2000円以下のすこし細い葉巻を買い、100円ライターで火をつける。普段使っているそれを忘れたからである。
もうすこしなんとかした方がいいのではないかという密かな声も聞こえるが、何バーなんてものは、退屈な男たちが集まることが基本だと信じている。
あ、どうも。
などと言ってスツールに居る先輩諸氏に頭を下げる。
■ だが12月はざわついている。
背中の辺りに、そういう空気が張り付いてきて、私は居心地が悪かった。
若いバーテンが尋ねる。これからどこへゆくんですか。
うん、埋立地で煙草吸ってるさ。
彼もまた泊まりで、地下にある寝床で仮眠して戻るのだ。