昼の月。
 
 
 
■ 車を洗ったあとというのは、大抵が雨になる。
「雨の日半額」という看板がすこし前にはあったものだが、最近は見かけず、つまりは洒落のひとつだったのかも知れない。
 そういう訳でもないんだけどね。
 
 
 
■ 今庭を眺めていると、なんという名の樹だろうか、すこしばかり色がついてきている。
 暫く前、思い立って日光の奥にいったが、さすがに日帰りは疲れた。
 ナナカマドが赤くなっていて、全体はこれから傾くのだろう。
 脱サラをして始めたようなペンションというかなんというかで茶を飲んだが、そこの女性たちは薄く不機嫌で愛想が乏しかった。
 かつては綺麗にしていたのだろう、という按配で、すこし前の下北沢界隈でみかけた横顔10年後という気配でもある。
 都会にいたときは、ランチの梯子をしていたに違いない。
 手作りの民芸のPOPがデジカメとプリンターで作られていて、成程スローライフはデジタルとガソリンによって支えられている。
 その後、滝が見えるというレストランで休んだ。
 既に暗くなっていたので音だけが聞こえていた。
 
 
 
■ 戻るということを考えずに、農道の真ん中辺りで月を眺めている。
 それは昼の月であり、西の空が少しずつ濃くなっていって秋の夕暮れははやい。
 勿論、車でなければ凍えるところだが、かといって戻ってから山頭火をひっぱりだすほどウブでもないのだ。