この里にすむひと。
 
 
 
■ なかなか、短い旅にいけないでいる。
「街角の煙草屋までの旅」という本が吉行さんにあったが、煙草を買いにその辺までというのも自分にとっては旅のようなものだ、という気分からつけられた題であった。
 この歳になると、こうしたセンスというのはよく分かる。
 また、旨いものだなともおもう。
 
 
 
■ 先日、白金台の界隈を歩いた。
 なんだい、近くに案外安くていい店もあるじゃないか、と、目黒で焼肉食べてからまたペペロンチーノをおかわりした。目黒の秋刀魚祭というのがあるそうで、どこへ行っても秋刀魚を薦められるのだが、まあいいやという按配で今年は外では食べていない。
 庭園美術館の庭を横目で眺めながら、とぼとぼと歩く。
 小さなビルをもぐったところに、酒場もあったりするのだが、何故かしらしゃらくさい気配なのであまりゆかないでいる。
 近くにあるスーパーで、そこの若いバーテンがポップコーンを一ダース買っているのを見て、おつかれさまと思った。