バンド。
 
 
 
■ 緑坂 3317 に使った画像は、横浜バンド・ホテルのエントランスである。
 今から10年近く前、96年や7年に撮影した。
 当時私は「夜の魚 一部」を、映像とテキストで作品にしたく、慣れないカメラを持ちあれこれ試行錯誤を繰り返していた。
 使っていたカメラは、シャッターが鳴いているA-1で、一台を潰し、秋葉原にあった中古カメラ屋で同じボディを3万で買った。F-1で撮るようになったのは暫くしてからである。露出までマニュアルだと、当時の私にはネガしか無理だったからだ。
 
 
 
■ 繰り返し商用に使われている「甘く苦い島」も、実はA-1とF-1で撮っている。
 その話はまた別にするとして、横浜、バンド・ホテルというのは、若造だった頃、女を連れ何度か潜り込んでいる。
 決して埃っぽいという訳でもない。
 昭和30年代から40年代にかけての調度品がいいように古び、机のようなカラーテレビで地方局を眺めた。
 当時、女はボディ・コンシャスで、脚だけ出していればそれで問題は乏しかった。
 脱いだ後の違いに驚いたのは、一度目か二度目の界隈である。
 E36のBMWでないことに不平を言う女は、二年経ってからミッキーマウスの飾りのついた結婚式の案内を送ってよこした。
 
 
 
■ 私は茶色の薔薇と梅干の詰め合わせを贈ったのだが、こういう分かりにくい性格はなんとかした方がいいわよ、と言われ続けて40代も後半に入る。
 バンド・ホテルは随分前から、深夜営業のディスカウントに代わった。
 元町にいた猫も、子をなしたのか、時折いっても見かけることはなくなっている。