プラネット 3.
■ クルセーダースのテープを聴きながら、狩場線の辺りから乗る。
最近の車はMDがついているのだが、私の豚セダンはカセットとCDである。車自体そろそろ換え時かとも思うのだが、これでいいではないかという気もしてならない。
多分、本当に欲しいものが見当たらず、こう見えて廻りのことも考えているからだろうか。
今いるマンションの地下には、不思議に英国車の棲息率が高く、XJが数台XJRも一台、隣は一つ前のポルシェである。911君はまだ若い彼が乗っている。最近まっすぐに停めているところをみると、慣れたのかも知れない。
フィルムを貼ったEの500やA6は当たり前として、水色のロールスも外国ナンバーのトヨタの隣にいたりする。そのひとはたまに犬を連れている。
一台、W124のツインカムのクーペがいて、これは大変にマニアな車種である。
CGの小林彰太郎さんがかつて手放しで誉めてもいた。恐らくは新車から、10数年棲息しているものに違いない。
■ いきつけの美容院のチーフとは20年近い付き合いであるが、彼もW124を買って時々店に乗り付ける。彼は大阪、南の方の出身で、S30や130のZの時代を知っていた。
シーマとかをローダウン(シャコタンともいう)してどうやろなあ、と髪を切りながら話す時代が数年続いた後の快挙である。
何故124かというと、やっぱバブルの頃に憧れたじゃないですか、という。
確かにあの後部絶壁の装甲車みたいな車体には、とうてい手が届かないものだとこちらは2リッターで意地になっていた。
高輪界隈にある美容院には面白い客もきて、元アイドル事務所に所属していたという彼も髪を切っていた。声が大きいのですぐに分かる。今は何をしているのか、周辺部にいるのかも知れない。ホストになるには、やや背が足りないだろうか。三の線という手もある。
■ 首都高速の側壁をちらりと眺める。
号線によって風情が微妙に違うのだが、これは東京という都市の成り立ちと今に関係しているのだろう。
霞ヶ関トンネルの合流、例えばここを120でいったからといって、それは車の性能だろう。目の前にヘルを被ったPCがいて、それはマニュアルのセドの3リッターだが、ふたつギアを落として加速した。60の制限のところ、瞬間的に倍は出ていた。私は流してゆくと、いつものことだがフイルムを貼ったメルセデスが捕まっていた。
覆面でなく、交機にパクられるのはダサくねえか。