上着を肩に。
 
 
 
■ この夏に買った服といえば、なんとかNYというところのプルオーバーがひとつ。
 セールだったからで、半額以下になっていた。
 腕をまくって着る。それでMTGにいったりもする。
 残りは出先で買った綿のパンツとシャツ数枚。
 なんとなく、服はどうでもいいような気がして長い。
 
 
 
■ あることで友人に礼を贈らねばならず、銀座、並木通りにあるブランドショップにいった。昔から男達の定番とか言われているところである。
 そこのライターは「死刑台のエレベーター」の中で使われていた。
 こう書くと、緑坂読者の中で映画好きな数割の方には理解されるだろうか。
 奴は煙草も酒もやらない男なので、好きだろう車の小物ということにした。
 銀のキーホルダーである。普段私が使っているものの、8倍程の価格がする。
 銀のアクセサリーというのは、使わないと黒くなってくるものだが、掌に入れておくものだからそうでもないだろうと考えた。
 
 
 
■ 男同士の場合、自分が使っていいだろうというものを贈ることにしている。
 グラスであったり、ライターや机の上の小物。
 あってもなくてもいい品物で、そのジャンルの中ではそこそこの質をしているものを選ぶ。あまりやりすぎると野暮になるし、自分では冷静な判断から、決して買わないだろうということもその基準にはなる。つまりは無駄だということだ。
 そういえば、まだ私が若造の頃、この通りにある店で綿のシャツを一枚作った。
 丸がひとつ多いくらいの価格だったが、十年程着て、襟と袖口が透けて見えるようになって捨てた覚えがある。決して太ったからではない。