乾くのは、底が濡れているからだ 4.
■ ハードボイルド小説を、若い頃にいたしかたなく読み耽った方々には、このコピーの持つ意味はお分かりになるだろう。
つまり、中身は感傷的でジメジメしていて、それをごまかすために硬い殻を被るという、青年後期の課題のようなものである。
■ 青年期を過ぎてどうなるかというと、何時までも何処か青いことを言っている心の綺麗な中年になったりする。
経験者はお分かりだろうが、彼と不倫するとなかなか大変である。
あるいは、するすると妙齢のベットに潜り込み、パンツを履かずに直にズボンを身に付けた「チャイナタウン」のニコルソンのような男にもなる。
が、ポランスキーの「チャイナタウン」では、最後にヒロインがあっけなく死に、ニコルソンは口を開けて嘆く。
ニコルソンが自らプロデュースした続編は、確か「黄昏のチャイナタウン」という題名だったが、大戦を経てやや成功した探偵の前に、過去の記憶を内包した事件が舞い込む。
つまり、何度も幻滅する男の物語であった。
幻滅の前には、何が必要かというと、つまりはこのコピーになる。