夢の日。
 
 
 
■ 暫く東京を留守にするのだが、今回は車で移動しない。
 あわただしくトンボ帰りになりそうである。
 
 
 
■「雪原を遠く離れて」
 という劇画が70年代始めの頃にあった。
 宮谷和彦さんの作である。
「性蝕記」「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」など、同時代性溢れる密度ある青春漫画を描き、絶大な人気を博した。画力も相当なもので、氏の描く車などはもしかすると誰よりも情念に満ちていたかも知れない。
 そう「情念」とか「造反有理」などという言葉が、一般教養として使われていた時代である。
 
 
 
■ あまりに時代に淫すると、それ以降は急速に失速する。
 確か三島由紀夫だろう人物が出てくる「肉弾時代」は、観念の空回りになってしまい、最後まで読むのは、暗黒舞踏の舞台を二日連続で眺めるのと同じくらい疲れた。
 同じく絵柄も、ややバランスの崩れたものになってゆく。
 あるときネットで、宮谷さん本人だろう書き込みをみかけたことがある。
 今は描かれていないのかも知れない。
 そんなことを思い出したのは、私がその初版をまだ大事に取ってあるからで、十代の頃に背伸びした世界というのは、抜けがたい。
 そんなことを思い出すのも、今がお盆だからである。