なんてことかしら。
 
 
 
■ そろそろ「夜の魚」二部 外灘 は大団円を迎える。
 読んでお分かりの通り、荒唐無稽なフィクションそのままになっている。
 あらあら戦車が出てきちゃったよ、ヘリもだ。
 戦争を楽しんでて、いいのか。よくないんですけれども。
 ドウシタラヨカロー、という按配なのだが、今再掲のために読み返していて、それもまた致し方ないものだろうという気分にもなっている。
 
 
 
■ 上海に永く住んでいる日本人の社長と話すことがあった。
 彼は大手商社にいたのだが、10年程前に独立を果たす。現在350名ほどの従業員を抱えた工場を経営している。年齢は60代半ば。
「価値観が変わりますよ」
 と、繰り返し私に言うのだが、これには折りたたまれた幾つもの意味があって、簡単にまとめることはできない。
 この作品の敵役、北沢という男は、今考えてみると明白に「新自由主義者」である。
 金と合理性をそのまま追求し、それが至上の価値ともなっていた。
 当時、彼の性格をもうすこし膨らませたらどうか、という指摘を作家の小嵐先生などからいただいたが、私にはその力がなかった。
 背中がぞっとするような、背後にぽっかり空いた虚無を抱えた男を想定していたのだが、旧来の価値観から外に出ることができなかったのである。
 私の力不足もあるが、10年という時代の推移がそこにはあるのかも知れない。