タイプ E.
■ 虎ノ門にあるホテルのエントランスに、ベントレーが二台停まっている。
そうなると、隣にあるメルセデスもマイバッハもどうでもよくなる。
なんにせよ、ボトルが一本三桁のものもあるという世界だからだ。
ただ、それをカウンターに置き、飲んでいるのは一目でその世界の方々である。
連れている女が、地方都市からのママさんのようで、果たしてそういうことであるのだと思いながら口にしない。
彼らが去った後、バーテンがひとつ溜息をつく。
■ 何時だったか、白金台の交差点で赤いEタイプを見た。
プラチナ通りへ右折するところだったのだが、サングラスをかけたまだ若い男が運転していた。
口の大きな、タイプ3である。
赤であるのがどうにも、とは思うものの、都心で実際に走っている Eを見たのは久しぶりである。
彼はまだ維持しているだろうか。それ以後は分からない。
■ Eタイプの話をすると長くなるので止めておく。
どんなものでもそうなのだが、乗り方次第で下品にも少し粋にも見える車である。
上海にEタイプというのは、95年の当時も非現実的だったが、今でもほぼあり得ない話である。
カイエンが多くいた。
あり得ない嘘を楽しんでいただきたい。
四時間かかった空路も、今は半分近くだったように覚えている。