赤い壁。
 
 
 
■ 緑坂3198に書いた「紅色新聞兵」の最後は、1980年に行われた横領犯人の公開処刑の写真である。
 ハルビンの5000人を超える群集の前に出された横領犯、王守信。
 彼女は文革当時の人脈を使って、県全体を支配したとされた。
 無実を叫ぼうとする王のあごの骨を外す官吏。
 隣に立つ官吏のふたりは若い女性である。
 
 
 
■ ハルビン郊外へ、トラックの荷台に載せられ、つれてゆかれる王。
 2月の凍った大地の上で、彼女は処刑される。ライフルに一発の弾丸。使われているライフルはAKではなかった。
 かつて走資派であった李振盛は、この姿をカメラに収めている。
 
 
 
■ 今の日本と中国に、どこが関係があるのだと言われればその通りである。
 また、ここで中国という国を評するつもりもない。
 だが、八月のだるい二日酔いの中で、やや荒唐無稽なエンターティメントを再掲している私としては、結局そう変わるものでもないのだなという重い気分がある。
 春先に起きた上海の暴動は、あれはほとんどが嘘であったという声を、在上海の日本人に聞いた。そのようにしなければ治まらない国なんだよ、ということである。
 俄かには信じがたいのだが、夜、租界界隈を歩いていると、二人ずれの物乞いがよってきて、なかなか離れてゆかない。
 兄なのか弟なのか、連れられている若い男の目はつぶれ、時折揺れる腕は虚空をさしていた。