港町十三番地。
 
 
 
■ 深夜の湾岸線を、美空ひばりさんの歌を聴きながら走った。
 普段は横羽に流れるのだが、疲れているのか、曲がりそこねた。
 
 
 
■ ひばりさんにはマドロス物という歌のジャンルがある。
 船乗りというのが、どこかいなせでモダンに思えていた時代の産物だが、同時にそれは進駐軍がこの国にいた時期とも重なる。
 
 長い旅路の航海終えて(作詞:石本美由紀)
 
 
■ 私は友人から挨拶状のデザインを頼まれた。
 彼が撮ってきた写真を「列島いにしえ探訪」や、コニカミノルタのADカードで使った雛形に流し込む。
 彼が短文を書く。半分は詩のようなものだ。
 おい、おまえ頼むと高いんだろう。
 まあなあ、でもおめーだから、○ひとつ減らすよ。
 わーい。
 と、いう按配で、なんともいえないものなんである。
 羽田のトンネル辺りで曲が終わる。
 成程、奴も長い旅路だったんだなと思いながら、黄色い照明の流れる海の底を下ってゆく。