ブルーラベル 5.
 
 
 
■ シングル・モルトを薦めるバーは二流である。
 という偏見を私は持っている。
 ほぼこれは、今の焼酎ブームに近いところがあって、大体そういうバーでは棚に焼酎の瓶が並んでいる。
 たかが焼酎にプレミアムかという気分もあるが、何が堪えるのかというと、ラベルのデザインではないかと気がついた。
 額にバンダナを巻いた特製ラーメン屋のメニュー文字にも似て、中途半端な禅の書に似せているからだと思われる。
 
 
 
■ いつぞや、赤坂のそういった場所のカウンターにいた。
 三十になっただろうか、バーテンが氷を削っている。
 何時から定番になったのか、グラスに合わせて氷を丸く削るというものである。
 暫くはしゃらくさい感じがして私は好きではなかった。
 最近は、仕方のないことなのだなと考えるようにしている。
 普通になってしまったからだろう。
 
 
 
■ バーテンダーが、薄いゴム手袋をしながら氷を削っている。
 暫くたって、おいおい、それだと手術しているみたいだなあ、と声をかけた。
 店長がそうしろと言うんですよ。
 なるほど、でも、削るところは見せないほうがいいかも。
 バブル以後、基準が変わっていることも頭の片隅で思い出している。