近くてわるいね。
 
 
 
■ ほんの暫く前まで、タクシーを拾う際にはひとこと告げるのが常だった。
 短い時間、車内に気詰まりな雰囲気を感じることが嫌だったからだが、どうも昨今はそうもゆかなくなっている。
 何時だったか国営放送で、雇用の受け皿という言い方をしていた。
 身も蓋もないことをいうもんだなと聴いていたのだが、実際はその通りなのかも知れない。
 かくいう国営放送の前には、十重二重に客待ちが並ぶ。
 
 
 
■ 米国の大手コンピュータ企業に勤めていたひとが、運転手をしていた。
 ネットラジオから録音した、JAZZのテープを流している。
 そのことは前に緑坂に書いたが、それ以来、そういうひとには遇っていない。
 パートでやっている女性であるとか、例えば北の方から単身赴任をしているという運転手には何度か遇った。大阪は今大変なんだってね。そうなんですよ。
 
 
 
■ まだそう遅くはない銀座や六本木、その界隈を自分が運転する車で通ろうとすると、車線が無くなっている。
 二列に客待ちが並んでいるからだが、向こうも仕事であるからクラクションを鳴らす訳にもゆかない。
 かといって、無理なことをする場合もあって、その判断が厄介である。
 つまり、何が言いたいかというと、東京においてはタクシーとの付き合いは避けて通れないものだということである。
 それが文芸の題材になっているかというと、小品がいくつかある。