キリサメ東京。
 
 
 
■ 深夜、所用あって運河沿いの街をうろついていた。
 時間まで、路肩に停め、ぼんやりと音を聴いている。
 なんのせいか腰が僅かに痛いので、背中に低反発のクッションをあてた。
 界隈は代理店であったり放送局が集まる一角である。まだ整備されきっていず、水銀灯だけが白い。
 ワイパーを止めていると、細かな雨がウィンドに広がり視界を狭める。
 私は遠くを見たり、近くに焦点を合わせている。
 三月末までにやるべき仕事が指折り、その次のことも左手で指折り。
 だからどうしたんだろうな、と思いながら、黒い鞄を持った男たちが過ぎてゆくのを眺めている。
 
 
 
■ 十年というのは、あっという間だった。
 傾きながら先を急いでいた時期もあって、よくあれだけ徹夜が続けられたものだなと思う。
 女の部屋でぶったおれていたり、午前の首都高C2を流すなんてこともなくなった。
 男の友人にしか教えない、隠れ家のような店がひとつふたつあればいいということになる。
 女は連れてゆかないよ。