隙をみせないで。
 
 
 
■ 夜になって雨になった。
 二日酔いで、一歩も外に出なかった。
 伊集院静氏の「乳房」という小説を読んだ。
 風呂に入り、髭を剃ったのだが、しくじって血がすこし出た。
 
 
 
■ 桜はもう終わりだろう。
 鎮痛剤をかじりながら、薄い酒を嘗めている。
 女の耳のかたちというのを、時折思い出すことがある。
 側にあるからだが、小さかったり、ふくよかだったり、中の三角に尖っている処が妙に目立ったり、眺めていると不思議に納得してしまうこともある。
 十代の少女が、思いの他したたかな耳朶をしているのに気付くと、このように再生産されてゆくのだと思うこともある。
 
 
 
○緑坂 vol.18 93年 再掲。