ザラリひょうたん。
 
 
 
■ 高田保さんに「ぶらりひょうたん」という随筆の連作があった。
 ほぼそれとは関係がなく、私は久しぶりにザラリという気分になっていた。
 例えば契約書があったとして、最低限それが守られない。
 メールでの合意事項は勿論のこと。
 畢竟、自分の方の都合を相手におしつけようとしてくる。
 そして、都合の悪いことを全て部下のせいにしたりもした。
 仔細は省くけれども、今、そういうことが普通に起きる時代になっている。
 大きな会社だからこそ、中では功を焦らねばならない。
 
 
 
■ 目黒から首都高に乗り、僅か15分で目的のランプに着く。
 地下の駐車場に入れるのだが、このビルも既に古い。その分、スロープに余白があって微かにカビと排気ガスの匂いがした。
 時間までの間、椅子のしっかりした喫茶店でコーヒーを飲んだ。
 喫煙の席には50代から60代だろうか、熟年と呼ばれる背広姿の男性三人が集まり、世間話をしている。年金の話も聞こえたりして、彼らは顧問か非常勤であるのかも知れない。 白髪と、痩せて襟の開いたワイシャツが目に付いた。
 私はテーブルの席にいて、遅いランチを取っている短いスカートの妙齢と眼があう。
 それから外を眺めると、水の出ていない噴水が乾いていた。