自意識あるものの群れ。
 
 
 
■ 金子光晴の詩に、うしろ向きのおっとせい、というものがあった。
 なんとはなく思い出している。
 金子さんは詩もさることながら「どくろ杯」などの三部作が優れ、こうした二月の夜などに漠然と読み返したりする。
 金だらいの中にする女の小便の音は、今なら鶯谷に立っている街娼の夜食喰う姿だろうか。敗戦直後の闇市は遠いものだとしても、今は違う闇の部分が広がっている。