千鳥。
 
 
 
■ 雪にはならなかった。
 日本の文様を調べていて、そのいくつかをデジタルに保存し資料化していた。
 こうしたものというのは、何もすることがなく特に酒も女も欲しくない午後などにその本文をゆっくりと読むべきものだが、なかなかそれまでに至らない。
 国立大学の医学部で医局部長をしている友人が、いつだったかメールをよこした。
 夜勤明けにサンルーフを開けて空を見たら、雲が綺麗だったんだよ。
 おいおい、高速だろう。
 おっと、そうだっけ。
 
 
 
■ 馬鹿だねえ、と思いながら彼の風情を思い出す。
 給料安くてな、バイト時々してんだ。
 とはいうものの、独身時代にはJAZZには凝る車はアバルトの112だったりの、本質的にはお坊っちゃんが大学にいって羽目を外したという側面もあった。
 私は彼に内視鏡を二回飲まされた覚えがある。
 練習させろ。ほら、じたばたすると痛いだろ。にこにこしながら言う。
 奴とは互いに痔になったことのある戦友なのだが、今もまだ保っているかと必ず初めに言いあう。