旅先のトリス 3.
 
 
 
■ この酒は、古くなった味の素に似て、大量には嘗めることができない。
 箱を開けると、プラスチックのコップというか定量スプーンに似たものがついてきて、唇にあたる。
 こんなところで、こんな風に、ただ酒を嘗めながらドテラを着ているのだなあ。
 と、思いつつ嘗める。
 もういちど風呂に入ろうかな。
 でもメンドクセエな。
 
 
 
■ 廊下に出ると、背中の曲がったご婦人が、浴衣の裾をひっぱりながら私を見ている。
 いやさ、案外に若いんで、うかうかできない。