狐罠。
 
 
 
■ 冬になると狐が山からおりてくる。
 山は飢えるからだ。
 
 
■ 私達は上野の歩道橋の下に車をとめた。
 黒の足立ナンバーが出ていった後だったからだ。
 雑居ビルの広場で、高校生達が何事かを待っている。
 赤い髪をして、数人づつ舗道に座り込んでいる。
 一本路地に入ると、ハングルやイスラム語で書かれた看板の店がある。
 数人がたむろして、鋭い目付きでこちらを監視している。
 道の外れの信号で待っていると、腰までストッキングの若い女ふたりと並んだ。眼があう。
「寒いね」
 と言うと、
「ニッポン、サムイ」
 と彼女は言う。
 
昔坂93_12_28