10 MINI CIGARILLOS.
 
 
 
■ あるフィルムメーカーの仕事で、アートフォト・ポストカードを販売する。
 デザインが4種類。画像が暫定で70枚ほど。
 先日、工場の若い担当者が見本刷りを持参した。
 雛型のデザインは私が担当し、それ以外は監修という具合になるのだが、見本刷りはぎりぎり許容範囲か、というデザインの仕上がりであった。
 とりあえずブウブウ言う訳だが、この場合見ての通りカタカナである。
 
 
 
■ 今手元に、ダビドフのシガリロのケースがある。
 白い箱に金色でロゴが入っているが、このフォントはデザイナならばご存知、件のヨーロッパ製のものに近い。細めのアバンギャルドも使われている。
 タイポだけでこれだけの緊張感を出すのだから、普通の煙草ワンカートン分の価格でも、つい買ってしまうということになる。
 デザインは商品そのものの質を示唆しているのだ。
 
 
 
■ 一般に次の段階の仕事というのは、手間暇がかかる。
 何度も企画を練りなおし、修正し、社内的に筋が通るようなものに持ってゆく。
 ここで大事なことは、組織というものの理解で、後ろに下がるべきときには大胆に下がる。これは契約内容その他にもいえることで、譲れない部分とそうでないところを峻別する。相手の立場というものも考える。
 以前、どうしてそういうことができるようになったのですか、と若者らしい質問を受けたが、何度も負けたことがあるからだよと答えた。
 どちらも、相対的なものなのだけれども。