無限都市、ニューヨーク 3.
■ 随分と前、マゾの気配が強い女を連れ、千葉の遊園地の裏手にいった。
多分朝方に近かっただろうと思う。
高速を降り、遊園地の脇道をまっすぐ下り、海に近づいてゆく。
路面には焼かれたガソリンの跡が残る。
捨てられた車の窓ガラスの破片が綺麗だった。
ゆるゆると車を走らせ、暫く経つと停める。朝日を浴びているガスタンクが原っぱの真中にある。
私はトランクから三脚を出して、一枚を撮った。
女は脇に立ち、今いったような顔をして風景を眺めている。
■ 1911年5月、ドリームランドは焼失する。
「世界の終末」ファザードに出演する悪魔達を照らすライトの配線がショートしたからだが、観客はこれもまた演出のひとつだろうと疑わなかった。
消防士の活躍を芝居仕立てで見せる、雇われ俳優たちが真っ先に逃げ出す。
ポンプの水量は追いつかない。
動物たちは、調教が旨くいっていたおかげで全滅する。象、カバ、キリン、ライオン。炎の中でどうすればいいのかは、鞭と餌は教えなかったのだ。
三時間後、ドリームランドはその姿を消す。
「DELIRIOUS NEW YORK」(前掲)この39頁の写真は圧巻である。
くすぶりながら、なおも何処かで美しい。
これは、マンハッタンの原型が焼け落ちた姿であった。