九月。
 
 
 
■ 書くべきことがあるような気もするし、まだ早いという気もする。
 いつもそんな気分が残っている。
 台風の後、東京では温度があがった。
 私は深夜、プラチナ通りを下り広尾界隈へと歩いた。
 小洒落たカフェのようなところで、温いギムレットと牛スジのお好み焼きを食べた。
 正直言ってうまくはない。
 
 
 
■ 店には代理店の人間がいる。
 あるいは制作会社の奴らもいる。
 すこし今風の妙齢を連れていて、自分の仕事の自慢をしている。
 表に停まっているのは、中規模な数年落ちの外車である。
 この界隈、こうした風情は少しも変わらない。
 流行っている酒が違うだけで、背の高い黒服は何処から通ってきているのか。
 横断歩道のところで、お年を召したご婦人が、暑いわねと自分の犬に話しかけていた。
 もう九月ですね。