胸に溺れる。
 
 
 
■ そう美しいものでもなく、ありふれた、横になればそれなりに広がる胸の色をしている。
 両手でつかむと、頼りないような中に重さがあって、痛がるが、どうにでもしてくれといった按配でもある。
 胸の下には腹があって、若いくせにかなり豊かだ。
 精神のかたちは、躯に顕れているのではないか。
 これは何を意味しているのか。
 溺れるということは、最中に考えないことなのだ。
 
昔坂。
94年6月