赤い波止場。
■ 駐車場のシャッターが昇ってゆくあいだ、ベルトを絞めていた。
黒塗りのハイヤーが停まっていて、運転席にテレビ局の旗が置いてある。
運転手が誰かを待っていた。
■ 車が戻ってきたのだが、特別感動はない。
20年近く使っていたナルディのウッドに換えれば、鈍いハンドリングもましになるのかとも思うが、Eクラスよりも長い車体で尻を振っても仕方がない。
結局この都心では、個人のタクシーやハイヤーに使われているような車が一番速いのである。
■ 裕次郎のモノクロ映画に「赤い波止場」というものがあった。
神戸の港、そこへ流れ着いたチンピラが次第に更生してゆく物語なのだが、港が見える屋上で、裕次郎が女に言う。
「飽きたんだ」