俺たちだけがしょんぼりみてた。
 
 
 
■ 北国の春の泥というのは、今、想像しがたい。
 その青い空に雲がぽっかり浮かんでいて、向かいの山々は白紫の霞のようなものに覆われている。
 裕次郎の歌には不思議なローカリズムがあって、それはオリンピックを契機として何かが本格的に曲がろうとしていた時代の不安と懐かしさに通じている。
 本人にその自覚がないところが天恵なのだが、「しょんぼり」しながら遠い浮雲を眺めているという構図は、なかなか良いものだと私は思う。
 しょんぼりしている。
 などということを歌えるだけで、当時の彼はスターであった。