冬でも半袖サイバ君。
 
 
 
■ 昔、秋葉には(秋葉原の略)、冬でも半袖サイバ君という奴がいて、PCのパーツを売ることが心の底から楽しそうであった。
 当時、23歳くらいだったろうか。
 真冬でもTシャツ一枚なので、寒くないのかというと、クロック・アップしているから発熱量がすごいんですと答えていた。つまり気合いである。
 当時私は、デュアルCPUのPCを自作し、NT.4.0を入れ、300A(これで分かる人には分かる)を450で動作させていた。450×2ですから、900と言いたいところだが、実際は1.4倍程度、単発機から双発に乗り換えたみたいなものである。
 当時、yominet のシステムを見ていた小森さん(仮名)は、同じマシンで家庭内サーバを組んでおり、彼は安定性重視でクロック・アップには慎重であった。
 オンラインで情報交換と、自慢をしあったことを覚えている。
 小森さんは、まだかなり高価だったデジタルカメラでPCを撮っていた。娘さんも写っている。
 一年ほど経ってまた秋葉の当該店にゆく。
 サイバ君はどうした、と尋ねると、なんだか勉強したいんでアメリカへゆくとか言ってましたけど、と別の店員が答えた。
 半袖でか。半袖でです。
 彼は千葉からアメリカにいった。ことになっている。
 それから数年して、その店は倒産してしまう。
 
 
 
■ どんな世界でも、技に走る一定の時期というものがある。
 ゼンギや体位に凝るようなものである。
 ある程度極めると、ま、こんなものかと飽きてくるのだが、その過程で覚えた技というのは忘れない。技というよりも、失敗の蓄積である。
 いわくメモリの増設はバルクを使ってはならない。
 HDDはいずれ壊れる。一部でも壊れた場合、データは皆読めなくなる。復旧は理論的には可能だが、試みにそれがいくらするかを調べると泣けてくる。
 RAIDは、小さなファイルサイズには適するが、一定の大きさ以上のファイルの場合、旨くゆかない。
 同様に、ダイナミック・ディスクは、煩雑にHDDを交換する場合には使わない。
 例えばこのダイナミック・ディスクという形式は、読者諸氏のPCでもかなりの確率で入っているもので、簡易RAIDのことなんです。
 
 
 
■ だからどうした、ということはないけれども。
 パソコンが安価になり、誰でも使える携帯電話に近いものになってゆく。
 それはネットがライフライン化してゆく過程とも重なるのだが、受け手と作り手は本質的にはどこかで立場が異なっている。
 作り手は、往々にしてマニアです。
 隠しているけれども、道具には凝っているもんなんですね。