祇園にて 3.
 
 
 
■ 祇園から八坂神社の脇道に入る。
 車を止め、歩いてゆくと沢山の提灯が並んでいた。
 人は誰もいない。
 
 
 
■ 私は先の50mm、F1.2 につけかえ、提灯の傍による。
 絞りは開放ではなく、いくつかクリックを廻している。
 梵字のようなものが見え、ややアンダー目に撮った。
 
 
 
■ 撮影しているときというのは不思議なもので、後からその情景を思い出すことができる。妙齢と遊ぶときはそんなこともないのに、その時の空気の湿り気や、遠くから聞こえてきた音なども確かに覚えているものだ。
 ここはコダクロームの色ではないだろうと、フィルムを取り替え、というよりもボディを換えるのだが、レンズを落とさないよう境内にしゃがんでいると、向こう側に人影が通った。
 人の影は軽く頭を下げ、それから消えていった。