夏服とニガリ。
■ せんだって同級の友人と飲んだ。
〆切と二日酔でタクシーを飛ばしてゆくと、彼は既にホテルの喫茶室で待っていた。
「もうダメ、トマトジュース」
「それなら、これいれろ」
と、彼はバックから石垣島産の「にがり」を取り出した。
■「あいつが持ち歩けっていっていたんだ」
あいつとは、地元で病院を経営している友人である。
「医者が言っているんだからいいんだろう」
「それは信用ならないなあ」
と言いつつ、やや多めに入れてもらう。
その日、私は彼ともう一人と夜更けまで一緒だった。
グラスを持つ度に「にがり」を分けてもらった。
最後のウーロン・ハイまで、15回くらいはそうだったかも知れない。
途中から「にがり」のボトルは、奴の上着のポケットに入っていた。
友達が良いというものは、とりあえずいいのだ。