出船。
 
 
 
■ 空が白みかけてきた。
 仕事場のガラス窓からは、遠く品川プリンスの常夜灯がみえている。
 避雷針の下、赤く定期的に点滅しているのだが、あるときには少し気ぜわしい。
 
 
 
■ 喉をやられる風邪にかかって十日ほどになった。
 時折、深い咳がでている。
 その他は単に背中が痛いだけで、昨日は打ち合わせ(MTG)がなかったので事務的な用事を済ませ、あとはぼんやりしていた。
 夕刻近く、車を出し、いくつかの所要を済ます。
 それから大井町、ゼームス坂上界隈の定食屋へ入ってみた。
 
 
 
■ 実をいうと、品川の祭がこのあいだの週末だと知ったのは、その商店街でである。
 随分と様変わりしていて、五八年続いたという衣料品専門の安売り屋が閉店セールをしている。
 ところが特別安くもないんだな。
 すぐ隣では、本来は肉屋であった店が発泡酒を並べ、焼き鳥などを販売していた。
 つまりは立ち飲みである。
 男たちがほぼ二十人ほど、ロング缶と櫛をほおばっている。中には折れ曲がった背広姿の男たちもいる。
 私は車できたことを後悔しながら、定食屋で二ヶ月遅れの漫画を左に、秋刀魚定食ともう一品、生姜焼きなどを食べていたりした。