■ 次の日の夜、私は感熱紙の指定に従い東銀座の地下道を歩いていた。
 この先どうなるのか、確かめてみようという気分になっている。
 昨夜受信したファックスには、時間と場所だけが活字で書かれていた。
 プラスチックの広告版に挟まれ、家のない男達が横になっている。ペットボトルを傍らに何本か置き、積み上げた週刊誌を真剣に読んでいる者もいた。
 五つ目の柱の角、段ボールを尻の下に敷き、口を開け天井を眺めている男がいる。いくつもの紙袋を廻りに置き、黒い帽子からはみ出た髪は見事に横を向いている。男の眼は大きい。
「あんただよ」
 呼ばれて傍によった。男は指を顔の前で動かしている。紫色の毛糸が太い指に絡んでいる。あやとりをしているのだ。